大学一年生、二年生は、何となく「大学生しているなあ」と感じますが、三年生ゼミに学生が来ると「何だが老けたかなあ」と感じます。そのことを学生に伝えると「…就活がありますから」という返事。さすがに人生がかかっているということですね。昨今は売り手市場で、本学も内定率(いつの時点かによるけれども)は94%くらいになっていると聞きます。(臨床心理士になるために大学院進学する5名~10名は「就職率」からは除かれています。したがって大学院進学者を分母からはずすと96%とか97%程度になります)

 各教員がみっちり指導する「三年生ゼミ」(ゼミは少人数での指導教育)は、多くても10数名程度で専門的な内容や体験をするので、そうした専門的指導も就活にプラスになっています。そして、心理学部・臨床心理学科で特に重視して育成する「心理コミュニケーション力」「心理的援助スキル」は「三年ゼミ」やその他の実習科目の眼目にもなっているだけではなく、就活にも大変に効果的な能力といえます。

企業の面接の場において

 全国レベルの金融機関に内定が決まった学生がいました。しかし、その学生は何と、面接員を相手に、ゼミの「ダンスセラピー」実習で体験した内容を実際にやってみたというのです。国内には「ダンスセラピー・リーダー」という基礎資格があり、これが取得できる大学は全国で唯一、札幌学院大学の臨床心理学科だけなのですが、相手と動きを通じて関わるアプローチを面接の場で試みた…。聞いたときは本当に驚きましたし、他のゼミの学生も「信じられない…」という顔つきでした。いずれにしても、その学生のアプローチが大変に新鮮だったようで、二次試験か何かの場で「君のような学生に是非来てもらいたい」とその面接担当の方に言ってもらえた、と学生が報告していました(その後、その金融機関に就職しました!)。凄い学生もいるものですねえ。

販売・サービス業が大好きな女子学生

三年ゼミの学生の中に、「サービス業が好き。販売の仕事に就きたい」と言っていた女子学生がいました。臨床心理学科の実習では、しばしば「カウンセラーとクライエント(顧客・来談者)」の二役で、二人でカウンセリングの練習をするのですが、これが「大好きです」という女子学生でした。その学生はサッサと内定をパスし、卒業前の2-3月頃から職場に入りお店で販売の仕事実習を始めておりました。「店長の話では、私の売り上げが道内でもトップクラスにあるみたい」と報告をしてくれたのですが「まさか、そんなすぐに?!」と驚いたことがありました。こちらも凄い学生ですねえ。

相手の話をズーッと聞ける学生

 ふだんでも知らない人に頻繁に話しかけられる学生がいます。穏やかな応対なのでその学生と話していると私も穏やかな気持ちになるし、人にはあまり言わないようなことでも、ついつられて話してしまう…そんな学生がいます。「心理コミュニケーション力」「心理的援助スキル」という心理学部・臨床心理学科の重要テーマをそのまま具現化したような感じです。バイト先などでは、その学生と話をするのが目的で来店する人も少なくないようです。そして、話をいろいろとする中でそれなりに高価な品物を選んで買っていってくれるので、お店の売り上げに大きく貢献している…ということでした。

非指示的な会話と関わり方

 臨床心理学での基本中の基本として「相手に指図しない、非指示的なアプローチ」というのがあります。心理カウンセリングの父と目されるC.ロジャーズが唱えた方法です。会話の練習とか対話の稽古というと、ディベートのような対立的な会話術を思い浮かべるものですが、臨床心理学の中では全くの反対です。相手をとっちめもしないし、指図もしない…。
 簡単なことではありませんが、そうしたアプローチをそれなりに身につけることは、臨床心理学科を卒業して社会に出て行く学生たち、そして、大学院に進んで臨床心理士になっていく学生たちには必須のことです。いわゆる、「共感的理解」「無条件の肯定的顧慮」「(自身に対する)純粋性」といったカウンセリングの基本が、18歳から22歳くらいの感性豊かな時期に体験でき、それが身になっていることは本当に素敵なことだと感じています。



 以上のような技能というか、人としての資質の進展は、次のような実習科目の中で培われています。

  • 臨床心理学基礎実習~三クラスに分かれた学生を、三人の教員が3時間実習指導
  • 応用実習A(グループワーク)~ニクラスに分かれた学生を、二人の教員が3時間実習指導
  • 応用実習B(芸術療法・ダンスセラピー)~ニクラスに分かれた学生を二人の教員が3時間実習指導
  • 応用実習C(施設体験・見学)~4名の教員が指導して学外施設の訪問、施設担当者による説明・講義
  • 心理学基礎実験~三クラスに分かれた学生を3名の教員が3時間、「心理学実験の実施・結果の分析・レボート提出」と、社会の様々な現場での実務に近い形式での実習指導
  • 三年ゼミ~関心のあるテーマをもつ教員のゼミにおける専門的指導や実習体験

大学は座学、すなわち「大勢で講師を話を受け身で聞いている」ことが中心だと思っている方がまだ多いようです。しかし、昨今の「アクティブ・ラーニング」に先んじて、臨床心理学科では座学だけではなく、応答的な実習が教育方法の中心にあることはあまり知られていないようです。特に「就活」を目的にしているわけではありませんが、臨床心理学科の実習科目は結果的に、「大変に良い就活対策」となっていることは間違いありません。